その日はいつもより昼休憩が遅くなり、となりに同僚が座ることもなかったので、友だちとLINEをしていました。
10月19日にBUCK-TICKのボーカル櫻井敦司さんがライブ中に体調不良になり、3曲を歌い終えて退場したまま中止になってしまい、不安な日々を過ごしていました。
わたしたちが行く予定のライブに復帰ができるのだろうか、でも無理せずに年内は全部中止してもいいからゆっくり休んでほしいよね、と友だちと会話していたところでした。
BUCK-TICKの公式から通知が上がり、
「親愛なるファンの皆様へ『大切なお知らせ』」という冒頭文が見えました。
数日沈黙だった公式からのあらたまった冒頭分に、すごく嫌な予感がして、すぐに震える手でタップしたけど、アクセス集中でリンクがなかなか開きません。
何度かトライして、ようやくつながった公式サイトには、あっちゃんが亡くなったことが書かれていました。
その文字列を読み進めるうちに手の震えはいちだんと大きくなり、目線も頭の中もぐるぐる回るような感覚になり吐き気がおそってきました…。
涙がにじんできたけど、ここでこらえないと、もう涙が止まらくなってしまう。
昼休みがもうすぐ終わるけどとても仕事なんてできない…早退しようかと思いつつも現実にはその申し出をする動きすらしんどくて、無心で席に戻りました。
午後からはなるべく仕事に集中し、考えないように考えないようにしながら終業までを過ごしました。
とにかく家に帰ってからゆっくり情報を見ようと思って、頭が混乱したまま帰りに本屋さんに寄って「音楽と人」を買いました。
ネットでは続々とニュースが上がっていて、SNSでは親交のあったミュージシャンからのコメントが…。
悪い夢だといいのにと願ったけど、どうやら本当のようです。
知り合いではなく、有名人の方の訃報でここまで打ちのめされたのは初めてです。
8月に亡くなったママ友のことを思い出して泣くことがやっとおさまったと思ったのに、また悲しみにくれる日々…。
仕事も休もうと思ったけど、仕事があってよかったと逆に思いました。
やらなきゃいけないことがあると、本当に気がまぎれます。
15歳のころ、あの圧倒的な美しさとダークでポップでハードな独特のサウンドに心をわしづかみにされました。(↑実家にあった当時の宝物)
CDも買ったし、ライブにも行ったけど、大学生になったころからBUCK-TICKを聴かなくなっていました。
ときどき動向が耳に入ることはあったので、活動を続けていてすごいなと安心したり、あっちゃんの現在の姿を確認してあいかわらずかっこいいなとうれしく思ったり、という程度でした。
ところが、1年前の8月、あっちゃんがコロナに感染したというニュースを目にして、その関連で、YouTubeの過去ライブ配信を見るうちに再度心をつかまれ、また大好きになってしまいました。
わたしが離れていた30年間の膨大な楽曲はどれもすばらしく、ずいぶんとブラッシュアップされていてクオリティの高さに感服!
わたしが結婚に失敗したり、なにも進歩してこなかった30年の間、BUCK-TICKのみなさんはどんなに努力してこられたのかと自分が恥ずかしくなるくらい。
なのに、あいかわらず死・絶望・退廃・宇宙をテーマに歌っていて、「ふふ。変わってないな~、あっちゃん。」と、微笑ましくも思えました。
幸福なことに、再びBUCK-TICKのファンになってから年末までにすぐにライブに行くことができ、アルバムもリリースされ、もうすぐ今年2回目のライブでした。
あの、同じ人間とは思えないほど美しくて、おっかないようで優しくてチャーミングなあっちゃんにもう会えないなんて。
もう、新作を聴いてあの鬼気迫る表現力に驚かされることもないなんて。
とても悲しかったけど、何日かたってだいぶ気持ちの整理がついてきました。
ミュージシャンは死後も作品は永遠に残ります。なにせ360曲ぐらいあるらしい。
だから一生聴いて楽しめるし、バンドは続けると言ってくれてるから、どんな形になるかはわからないけど、BUCK-TICKがなくなるわけじゃない。
でも、もう、大好きなあっちゃんの新作のボーカルは聴くことができない…。
「今度」があるのが当然ではないし、次の予定が必ず遂行できる保証はないのです。
人生は無常。
わかってはいるけど、わたしも50歳になって、あらためて悔いのないよう生きること、意識をしていこうと思いました。
BUCK-TICKを聴いたことがない人はぜひ聴いてほしいし、初期のBUCK-TICKしか聴いてなかった人にはとくに2012年以降リリースの作品を聴いて驚いてほしいです。
わたしが、うわー!と驚き、また聴きたいと思わされたきっかけの曲は「MOONLIGHT ESCAPE」です。
あっちゃんはわたしの人生に彩りを与えてくれました。
心からありがとうと言います。
どうかおだやかで平和な世界で、安らかに休んでください。
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