実家から親がやってくる
モラハウスから脱出して別居を始めたことを親に告げた翌日。親が朝からやってくることになっていた。
万が一にも親がモラ夫と電話で話すことがあったとして、新しい住所がバレてはいけないと用心していた。
そのため、この時はまだ新しい家がどこかを具体的に親に教えていなかったので、元の家の近くにきたら電話をしてもらうことになっていた。
でも、もう着いてもよいころなのにいっこうに連絡がこない。
高齢の親が遠くから車を運転してくるだけで心配なので、せかすような電話をかけることは遠慮して待っていた。
車でわたしのところに来たことは2~3回しかなので、迷っているのかもと心配していると、やっと電話が。
「遅くなってごめんね。実は元の家に寄って、モラ夫さんと話してきたのよ。」
と、驚くべき言葉が!
モラ夫はわたしの親やきょうだいにはいつも愛想よくしていたので、あろうことかうちの親は娘に会う前にモラ夫に電話をしたのだ。
そして、どういういきさつか分からないけど、まずはモラ夫と話をするために両親は元の家に行ったのだった。
新しい家に親がやってきた。子どもたちはいつもの週末のように部活や友だちの家に行かせていて不在だったので、3人で話をした。
親はまずはモラ夫の言い分を聞いている状態。
モラ夫は、まったく出ていかれる理由が分からないとうろたえていたらしい。
・・・まったく理由が分からないだと???
いつも些細なことで怒られ、手を上げられたこともあって怖い。生活費もじゅうぶんにもらえず、パートを増やしても首が回らない。
ということを娘から聞いたとモラ夫に伝えた親。すると、
いったんは全部自分が悪いと謝ったものの、わたしが子どもの発表会もほったらかしで(実際は発表会行ったんだけど)ライブを優先したり、貯金が全然できてなかったから生活費を管理することにしたなどと、わたしに否があることを吹きこんだとのこと。
モラ夫が事実とは違うことを言っていることを必死で説明して、とにかくわたしは限界までガマンしたけどもう無理、顔を見るだけで怖いと主張した。
モラ夫は外面がよくて口がうまいので、実の娘なのにすんなりと納得してくれず絶望したが、母のほうが先に娘の決心はかたいとあきらめがついたようだった。
逆に父は話し合いをすればなんとかなるとなかなかあきらめない。
必死で接触しようとするモラ夫
父は用事があったので夜には実家へ帰らなければならなかったが、母は心配なので数日残ってくれることになった。
翌日はわたしは仕事があり、母に子どもの習い事の送迎をたのんでいた。
ところが、お昼前に、ご主人がこられてますけど…と職場の受付の方が不思議顔でわたしに伝えにきた!
わたしはサーっと血の気がひくのを感じ、全身が硬直した。すぐに部長に声をかけ、別室で事情を聞いてもらった。
部長はモラ夫にわたしのお昼休みがもうすぐだから出直してほしいと伝え、一度モラ夫を帰らせた。そしてわたしをすぐに早退させてくれ、裏口から通りに出るまで送ってくれた。
ケイタイには母からメッセージが入っていた。
「モラ夫さんが習い事先にきました。終わるまで待っていて、みんなで昼食を食べようと言ってます。」
本日2度目のサーっとひいた血の気。もう顔は真っ白。きっと目も白目だったにちがいない。
モラ夫の電話は着信拒否していたけど、きのうから長文謝罪のLINEは矢のように入っていた。
このときもLINEが鳴った。
それは、わたしが今いる場所の近くの写真付きだった・・・!!!!
わたしはパニックになり、近くの交番に駆け込んだ。
「どうしました?」
と警察官が声をかけてくれた。
わたしはガタガタ震えるスマホのLINE画像を見せながら、
「夫がこわくて家を出たのですが職場まで来てしまって・・・。子どもが連れ去られそうなんです!今この写真が送られてきて、わたしももう見つかってしまいますぅ~っっ!!」
としどろもどろの説明をしたけど、当然警察官の方は落ち着けよと言わんばかりの表情。
座ってくださいと言われ、氏名住所などを書きながら経緯を話した。
「今までDV相談をしたことがありますか?」と、聞かれたけどそれはないと答えた。
記憶があいまいだけど、相談を何回かした記録があったら何か待遇がちがうのだろうと感じた。
話を聞いてくれただけだったが、連絡先も書いたし、何かの際には守ってもらえるかもしれないと少し落ち着いて、母と娘が帰宅するころなので帰ります・・・と交番を後にした。
モラ夫がいっしょにいると思うと、母にも子どもにも電話はできずにもんもんとしていたけど、交番を出てからほどなくして母から電話があり、モラ夫と別れて子どもと二人で新しい家に戻ってくると聞き、心底ほっとして家路についた。
その後、さっきお世話になった交番から電話があった。
大丈夫ですか? と安否を確認してくれて、不安ならシェルターに入ることも考えてはいかがですか? と言ってくれた。
いちげんさんお断りなのかしら・・・と、ちょっと失望していたけれど、あの後わたしのことを心配してくれていたんだなと胸が熱くなった。
モラ夫は母と子どもから離れられて、これからモラ夫には知られてない家に帰るので大丈夫ですとお礼だけ言って電話を切った。
子どもがモラ夫の家に戻ってしまった!
やっと新しい家で母と子どもに再会できた。
習い事の場所にモラ夫がやってきて、食事をしながら話し合いをしようとゆずらなかったとか。
母は押しが弱いので、断れなかったと。
そう話をしていると、玄関からピンポンと鳴る。
上の子が部活から帰ってきたのかと思ったが、念のためドアスコープをのぞくと、あっちもこちらをのぞいているかのようなモラ夫の顔が!!
本日血の気が引くこと3回目!!
なんで家がバレてるの???
3人で息をひそめて不在を装うけど、モラ夫はドアをドンドンとたたいてなかなか帰らない。
祈りながらモラ夫が帰るまでジッと身を寄せ合っていた…。
そして夕方になり、今度は子どもが部活から帰ってきたが、おとなしかった性格がウソみたいに大暴れした。
「オレの家はあっちだ! 家に帰る! お母さんも帰ってきて!」
わたしはショックだったが、必死に止めようとしたけど突き飛ばされる。
母と娘は、はじめて見る反抗期のような子どもの様子に声をかけることすらできずおびえている。
身の回りの着替えをバッグにぐちゃぐちゃに詰めて出ていく息子に行かないでとすがったが、振り払われてドアを閉められた。
子どもを失う恐怖で真っ青になったが、どうしてもモラ夫のいるあの家に追いかけることができない。
そう、モラ夫は今朝、部活のあるグラウンドで待ちぶせをして居場所を聞き出していたのだった。
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